顔も性格も対して好みじゃなかった
ただ、好きでいてくれたし、
匂いが好きだった
前日まで死ぬほど冷めていたのに
匂いを嗅ぐだけで僕はきっと好きなんだと誤認していた
部屋の匂い、髪の匂い、服の匂い
全部が混ざった時にそれは木天蓼と成り果てた
冷え性の右手を平熱が高い左手で包んでも何も感じなかったし
別に見た目に惹かれたわけじゃないから、水着も浴衣も楽しみじゃなかった
花火も天体観測も映画も手段でしかなくて
横で集中してるフリをして匂いに包まれていればそれでよかった
ただ、匂いが好きだったし、
今でもその匂いを探してしまう
そして隠すように煙を吐いてしまう